REPORT

2022/09/16-18(10:00-16:00)
第一回『What's a ZINE?』-ZINEおすすめ会-
主催:「What’s a ZINE?」運営委員会(淡濱社魔術書工房
会場:利尻町定住移住支援センターツギノバ(内オトノバ)

主催 / 魔術書工房発行のZINE+紙もの雑貨で出展

あらためまして、本づくり・紙雑貨制作の魔術書工房、永都(ながと)りすと申します。
この記事では初めて主催したイベント、「第一回『What's a ZINE?』-ZINEおすすめ会-」の感想を認めたいと思います。

BGM:NIKIIE / *(NOTES)

【イベント概要】
「ZINE」とは本・雑誌の一種で、その定義は広く、個人やグループでの製作・少部数発行等、かたちを含め自由度の高い――さまざまな形式を内包する表現方法です。
『What's aZINE?』(略してワツジン)ではZINEを「表現したいものを表現した紙媒体の作品」とし、全国各地から是非手に取っていただきたい作品だけを集め展示します。(一部販売も有)
【『What's a ZINE?』-ZINEおすすめ会-】の詳細については是非こちらのHPを参照ください。





イベント開催までのお話。

イベント開催までの経緯は、会場他で配布しておりますフリーペーパー「このたびは」に残しましたので、こちらでは簡単に。
ワツジンは魔術書工房と淡濱社の共同(ふたり)主催のイベントです。

利尻島で活動されている淡濱社の濱田さん(本が読める出版社・読書の窓口・島のお助け司書の三本柱で活動)とtwitterにて意気投合し(紙好き)、昨年『推し紙!』というZINEを一緒に発行しました。
そして2022年。家人の事情で私の利尻島移住が決定。こんなご縁があるのかとわくわくしながら移住してまいりました。

直接お会いする中でお互いZINEのイベントを開催したいと思っていることがわかり、どきどきしながらも永都から共同開催の提案をしたところ、快諾いただき、とんとん拍子で9・10月の開催が決定。いまに至ります。

利尻の地。

私は札幌出身で、学生時代から転々と住まいを変えています。東京で働いていた頃は千葉県の舞浜に住んでいました。
いまの住まいはそのどことも違う土地。
比較的いろんな土地を転々としてきたつもりだったので、移住でここまで新鮮な気持ちを味わうことはないと思っていました。
利尻島はまず利尻山と海が美しい。お天気が幸せ。(風が強い日は大変ですが)過ごしやすい環境。そして人が温かいです。(たまに親切な方が多すぎてびっくりしてしまいます。)
先日久々に札幌に帰省したのですが、「利尻島はやっぱりいいな」と感じてしまいました。地元が嫌いなわけではないのですが、利尻での運転の楽しさや自身の好きなものがちょうど集約されている(散歩が楽しい環境・資材を購入できるホームセンター・楽器を練習できるスタジオ・なによりきれいな海と山)ため、すっかり寛いでしまっています。
冬を迎えていないため、まだ利尻の生活の一端しか体験できていないですが――。
来たことがない方いらっしゃいましたら是非春先から秋までのお天気に恵まれた季節にいらしてください。
「山」の美しさと迫力は、ここ利尻島でしか感じられない迫力が絶対あると思います。

ふたり主催でできたこと。

まずはじめに。
ひとりだったら、イベントの開催は難しかったと思います。

共同主催の濱田さんは利尻島で地域おこし協力隊読書推進員として活動していたこともあり、いや、それ以上にお人柄とご自身の活発な活動によるものだと思うのですが、「本」に関わる人たち、他の方々とのご縁をたくさん結んでいる方です。
ご縁という言葉が苦手な方もいらっしゃると思いますが(という私も両腕を広げて受け入れることがなかなかできない人間です)、イベントを主催する際は、特に今回のイベント開催では濱田さんのこれまでの活動が築いてきた信頼にすくわれた場面が幾度とありました。
信頼をいちから積み上げるだけの時間は正直なかったと思います。利尻という地でイベントを開催するならどう動いていくべきか、お任せしてしまったところがあります。

一方私にあったのはこれまでのイベント参加経験でした。
中学生の頃から、絵を描いたり小説を書いたり、本や紙ものをつくって頒布していました。
札幌出身であることもあり、小さい会場から大きめの会場まで一般・サークル参加ともに定期的に参加していました。
不思議とご縁があって、イベントの主催者様のそばでイベント運営の過程を拝見したりお手伝いする機会や、仲良くしていた方がイベントを立ち上げる過程も体験できました。
イベント準備として必要なこと、作品の見せ方。出展・来場、ふたつの面から「よい」イベントとは「楽しかった」と思えるイベントはどんな用意がされていて、どのような繊細さがあったか……。作品の見せ方、 いってしまえば、これまでみてきたイベントのよいところを煮詰めた理想、みたいなものがありました。

ワツジン(『What's a ZINE?』略)は毛色の違うイベントだと思っています。
まず展示がメインだという点。本・ZINEのイベントは販売会が多いですが、ワツジンはあくまで展示がメイン。
我々はおすすめしたいZINEを広く手に取っていただき、ZINEという世界にふれていただくことを目的としています。その続きとして推したい作品を実際に手に取っていただく(お求めいただく)機会も用意できたらということで会場販売と事後通販を加えた感じなのです。
委託販売に慣れている方からすると、大雑把には他のイベントと変わりないけど、細かい部分が異なる、参加しにくいイベントだったかもしれません。ご質問もたくさんいただきました。
イベント開催日が近づく中、「私たちがつくりたいイベントは私が知っているイベントを組み合わせただけではできないんだな」と実感しました。
都度、「こういうことをしたいんだけど」「そうするとこういうことが起きるかも」「こんなときはどうしよう」を確認し合いました。
もともと開催したいと思っているZINEイベントの認識にずれがあったら、どこかで崩れていたのではないかと思います。それくらいたくさんのことを決めなくてはなりませんでした。

と、前置きが長くなってしまいました。
そろそろイベントの様子と感想を私の視点からお伝えしたいと思います。(後日twitterのスペースで配信もありますので、よろしければいらしてください。)


初日。

一人も来てくれなかったらどうしよう……。そんな不安と素敵なZINEがたくさん並んだ会場で終わらない準備を進めていました。
準備はしていたものの、私も濱田さんも自身の作品の準備の時間が足りておらず、ばたばたと自身のスペースを整えておりました。
天気は快晴。風とともにある利尻もこわいくらいに風がなく、波は凪いで天候に恵まれていました。
平日ということでご来場者様が少なくても悲しまないようにしよう、そんな思いでお渡しする箔押し記念カードを準備していました。

はじめにいらしたのは私がフライヤーをお渡しした読書好きの方でした。
その方がいらしてくださったことで、一気に肩の力が抜けました。
本当に本当に、一冊一冊じっくり、読破する勢いでZINEを読んでいってくださいました。

それと同時にまた来場くださる方がいらっしゃり、私も濱田さんも簡単なご案内・対応に追われました。
来場者様が会場を出られて主催ふたりきりになった瞬間、顔を見合わせてほっとした瞬間を忘れられません。

予想を超えて、初日・平日であるにもかかわらずたくさんZINEにふれていただきました。
予想を超えて、じっくりじっくり読書の時間を過ごしていただきました。
自分が出展者だったら、この光景は嬉しいだろうな、と素直に思いました。
装丁が気になってあちこちページを開いて、角度を変えてZINEをみる。ポップを読んでこんな本があるんだと楽しそうに話してくださる来場者様。……とちょっと書いてて泣けてきました。
「ZINEという文化があるんだ!」「個人(グループ)でこんなふうに本をつくっている人たちがいるんだ!」。
ワツジンのようなイベントが(おそらくあまり)ない土地でのイベントだからこそ伝わったもの、体験していただけたことがあったと思います。

また、来場者様のどなたも作品を大事に扱ってくださいました。
展示方法で配慮したのは、どうしたら見本誌を丁寧に扱っていただけるか、かつ気軽に読んでいただけるか。
見本誌として自由なお席にもっていって読んでいただけるディスプレイ、配置、お席の準備。
自身で大切に戻し、次の作品を手に取っていただける環境。
今回はそれがうまく伝わったのかな、と思います。それと、濱田さんが丁寧に案内してくださったのも大きかった。
私は特典カードの準備(会場奥に電源がある)でわさわさしていたので、ご来場者様が重ならない限りはすっかりお任せしていました。(濱田さんの御本をお持ちの方やお知り合いの方も多かったです。)





二日目。

雨。小雨と粒が大きめの雨が交互に繰り返す、風は変わらずない読書日和。
前日忘れ物(自身の作品の特典)をしたため、ゆったりスタートとはなりませんでしたが、初日よりは開場準備はスムーズで、朝から来場者さまをお迎えする体制が整っていました。
特典カードの準備の仕方も随分慣れて、遠慮せず声を掛けることに決めました。
理由は、思っていた以上にご来場者さまに観光でいらしている方が多かったからです。

会場であるツギノバはカフェラウンジやコワーキングスペースがある施設で、島民の方や観光の方も気軽に利用しています。
ワツジンを知らない方でもとなりでイベントをやっていると聞いて足を運んでくださる機会がありました。
島民の方といっしょに訪れてくださる観光者さまに利尻山をあしらった記念カード(日付を箔押ししたもの)をおすすめしたところとても喜んでいただきました。
利尻島に訪れた記念に、持ち帰っていただけたことが嬉しかった。ZINEが並んだ会場で、あの空間に足を踏み入れたことを思い出していただけたら嬉しいな。
誕生日プレゼントにするのでお祝いのメッセージを入れてほしいという方もいらっしゃいました。
魔術書工房は本づくりと紙雑貨制作の兼業。
紙そのものをいかした紙雑貨を目指して制作しています。「お手紙」というもの、人に贈るものが、ものづくりが好きなのです。
それを対面で、実感できたことは本当に嬉しかった。コロナ渦になって、対面で作品をお届けする機会からずっと離れていました。紙ものがもつ力を、あらためて実感しました。

少しZINEから話が逸れました……。

三日目。

台風が近づいてきて風が少し。ほとんどが曇りで雨も時々。
天候には恵まれませんでした。どうにか搬出(お預かりした作品を別棟の保管場所に移す時間)だけは晴れてほしいと朝から祈っていました。
私の自宅は会場から少し離れたところにあります。
雨が上がった一瞬を見計らって自身の作品や道具を車に運び込み、車を発進させました。
すぐに雨が強くなりワイパーを切り替えタイヤが雨で滑らないかひやひやしながら会場へ向かいました。

三日目ともなると勝手知ったる場所というか、開場準備にも余裕が出てきました。
前日からの雨で湿度が心配だったので、作品は除湿剤とともにこれまで以上に丁寧に保管していました。それを開け、さらに会場の位置によって湿度もことなるので湿気対策。

今回の会場はもともと学校だった建物です。それも別棟の旧音楽室。とても素敵なスペースですが、ワツジンのような三日連続貸し切りの使用は初めてで、それゆえ細かい確認も必要でした。
私も楽器練習のためにお借りしたことがあるのですが(どちらかというとスタジオとしての利用が多いスペースなのです)、数時間の使用では気付かなかった点がたくさんありました。事前準備に加え、その場その場で対応。濱田さんも私も「こうしようか!」「そうしよう!」のテンポがはやいタイプなのでふたり揃っているといろんなことがどんどん決まります。

三日目の来場者様は天候と連休中日ということもあり少なめでした。
けれど、本好きの方、写植の経験のある方、紙ものが好きな方、と作品にふれていただきながら主催とのお話で盛り上がる場面が多かったです。もっとお話し聞きたかったな。

当初三日間の開催は平日と土日を含めたいこと、初回のイベントなのでイベントをやっていることを知ってもらうのにも時間がかかるかもという点で少し開催を長めにとりました。
来場者様の流れは予想と異なり平日・初日が最も多かったのですが、三日間開催だからこそわかったこともあります。
通常の販売会だとおそらく自分で読むためにZINEを買うことが多いと思います。(通販も)
それが、対面販売だからか、土地柄か、贈りものとしてZINEをご購入いただく機会が多かったのです。これは素敵な発見でした。
ZINEが贈りものになる。私にはない視点でした。素敵だな、と思いました。

また濱田さんのサイン会の場面もたびたび目撃しました!
すでに濱田さんの御本をお持ちで、「どこかで会えたら……」と考えてご来場いただいた方がいらっしゃいました。
私は本のサイン会に参加したことがないので、「これがサイン会か……」とどきどきしておりました(笑)

全体の感想として。

まだまだ書き残したいことはありますが、最後に出展者様にお伝えするとしたら。

「好きなこと、思っていることをこんなふうに本(かたち)にしている人たちがいるなんてすごい!!」

こんなお声をたくさんいただきました。
そう、すごいんです。自分の考えや思い描くことをZINEというかたちに仕立てていること、届けていること。これはすごいことなんです!
ZINE界隈に身を置く出展者様の中にはこの「すごい」が当たり前になっている方も多いのではないでしょうか。
一冊のZINEを仕立てることはすごいことなんです、そこには思いがあって時間と労力と理想と苦悩があって、それが一冊というかたちになっているのです――。

私は本の、ZINEのそういうところが好きです。
誰かの視点で、誰かの思いが仕立てられてそこにある。誰かがふれる、そこからまたなにかにつながったりかたちになる。
かたちにならなくても、思いは波になります。誰かの心に、言葉に、行動に。意識できるかはわからないけど波を立たせる。
本というものにすくわれた経験があります。そういうものと繋がるかもしれない場に、そういうものを知っていただく場に少しでもなったのならこのイベントは大成功だったと思います。

この後、事後通販を控えておりますのでまだまだ気を引き締めて努めたいと思っています。
遠方で開催を見守ってくださった方、ワツジンを知ってくださった方にも今回お預かりした作品や記念カードをお届けします。
予定では20日(火)頃からワツジンHPで通販の受付を開始します。詳細はもう少しお待ちくださいませ。

ひとまず無事開催期間を終えられたこと、お預かりした作品を損なわずにいられたこと、ZINEにたくさんふれていただけたこと、たくさんの嬉しいお言葉・応援をいただけたこと、主催ふたりが元気であること(笑)に感謝してこの記録を閉じようかと思います。

ご来場者様、見守っていただいた皆様、ご協力いただいた皆様、会場のツギノバの皆さま、共同主催の濱田さん、そして私の活動に反対することなく好きに挑戦させてくれる家人。本当にありがとうございました。
まだまだ走り切ります。次回も来月21日から23日までの三日間の開催が決まっています。
本当の意味で無事閉幕できるよう、これからも頑張りたいと思います。

2022/9/18 紙雑貨作家 魔術書工房 永都りす