REPORT2

2022/10/21-23(10:00-16:00)
第二回『What's a ZINE?』-ZINEおすすめ会2-
主催:「What’s a ZINE?」運営委員会(淡濱社魔術書工房
会場:利尻町定住移住支援センターツギノバ(内オトノバ)

主催 / 魔術書工房発行のZINE+紙もの雑貨で出展

あらためまして、本づくり・紙雑貨制作の魔術書工房、永都(ながと)りすと申します。
この記事では共同主催したイベント、「第二回『What's a ZINE?』-ZINEおすすめ会2-」の感想を認めたいと思います。


【イベント概要】
「ZINE」とは本・雑誌の一種で、その定義は広く、個人やグループでの製作・少部数発行等、かたちを含め自由度の高い――さまざまな形式を内包する表現方法です。
『What's aZINE?』(略してワツジン)ではZINEを「表現したいものを表現した紙媒体の作品」とし、全国各地から是非手に取っていただきたい作品だけを集め展示します。(一部販売も有)
【『What's a ZINE?』-ZINEおすすめ会2-】の詳細については是非こちらのHPを参照ください。



イベント開催までのお話。

前回もご紹介しましたが、イベント開催までの経緯は会場他で配布しておりますフリーペーパー「このたびは」に残しましたので、こちらでは簡単に。
ワツジンは魔術書工房と淡濱社の共同(ふたり)主催のイベントで、利尻島で活動されている淡濱社の濱田さん(本が読める出版社・読書の窓口・島のお助け司書の三本柱で活動)とtwitterにて意気投合(紙好き)、ZINEを一緒に発行したこともありイベント開催のお声掛けをし開催が実現しました。

濱田さんもレポートをアップされておりますので、私は会場の様子ではなく裏方のお話を認めようと思います。
会場での様子は淡濱社さまのレポートや配信で楽しんでいただけたら幸いです。

第二回ときらきら。

なにごとも、二回目というのは一回目を超えるのが難しいと感じています。
小説の続編、新商品の第二弾。イベントもまた然りです。
初開催の9月から約一カ月で第二回を開催したのは利尻島の冬の環境に起因します。
以前住んでいた留萌でも経験していますが、降りしきる雪が強い風に舞いホワイトアウトが起こるのです。
島内全線通行止めになることまであると聞き、雪が降る季節の開催はご来場者様の安全と準備が難しいことから開催を控えることになりました。

しかしながら、今年移住してきたばかり私。この移住は期間限定です。
弊工房は北の大地を巡る工房として活動しておりますが、それは家人の転勤に合わせて私も道内を飛び回るからです。
すっかり気に入ってしまった利尻島の暮らしも、2~3年と聞いております。
せっかくこんなに素敵な利尻島にきたというのに、ぼうっとしていたら数年なんてあっという間に経ってしまいます。
初開催だけでも懸念はありましたが、主催することが決まった時点で少しでも多く開催したいと第二回開催の予定を決めていました。
島民の方や訪れる観光の方も素敵な方が多いんです。
すこしでも利尻の素敵なものを描いて作品をつくりたいし、島民や島を訪れた方に記念になるような紙ものや本をお届けしたい。
不安に思っている暇はないと思いました。

私は、なにかに向かって努力したり、挑戦している方が好きです。
きらきらした瞳、懸命に立ち向かう姿はこちらまでそわそわして、清らかな心地にさせてくれます。
開催について迷っていた時もある場所でそんな姿を目にしました。ああ、尻込みしている場合ではないなと思いました。
勿論慎重に、考えて動くことは重要です。
ただこの件に関してはただの私の心配性と小心の問題でした。

そうして、無謀にも思える年内二回開催が決定しました。
ひとりだったらさすがに見送っていたかもしれません(笑)



愛がないとできない。(準備がいっぱい)

第二回を開催して強く思ったこと。
「作品への愛がないとお預かりすることができない」ということです。

ワツジンは一般的な、公募のかたちで作品をお預かりしていません。
主催のふたりが「この作品を推したい」、利尻で、ワツジンでお預かりしてたくさんの方に見本誌を読んでいただきたい、気に入ってくださった方のもとへ旅立ってほしいという理念で開かれています。
魔術書工房も淡濱社様もZINEをつくって展示や販売をしていますが、自身の作品を取り扱うのと作家様の作品をお預かりするのでは全く取り扱いが異なります。
大切な作品を一定期間お預かりし、その期間少しでも手に取って楽しんでいただき、無事お返しする――。
雨が降れば湿気対策、見本誌もできれば大切に読んでいただけるように展示方法を工夫したり。考えれば考えるほど、できることはでてきます。

取り扱う作品数が少なめなこともあって広報活動にも力を入れています。
島内活動としてはフライヤーやポスターを島内のお店や施設においていただいたり、第一回はラジオに呼んでいただいて告知をしたり。
ワツジンは基本分担制で、そのおかげもあって無事開催に至っています。

島内活動を含めた広報活動は濱田さんが積極的に取り組んでくださっています。
施設をお借りできたりポスターを貼っていただけるのも普段の濱田さんの活動があってのことです。HPの開設・更新、事後通販受付やその他にも担当していただいています。
一方永都はイラストや紙もの(フライヤー・ポスター・特典等)の製作。日程やイベント自体の段取りを組んだり、出展のお願い・概要を含めたお知らせやメールなどのご案内をつくっています。
基本的に二分してお任せ、お互いに確認しあって準備を進めていますが、それでも準備しなくてはならないことは盛沢山。
これまでひとりで活動してきたこともあり、確認を取り合ったり、企画について率直な意見を聞かせていただけるのは本当に有難いです。
(ひとりで主催されている方には尊敬の念に堪えません……。)

好きでないものを好きということは難しいです。
これは性分なのでしょうが、好きなものに関わる仕事をしているからこそ、自分の「好き」を軽く扱いたくないのかもしれません。

お預かりしている作品は、自身が手に取って本当に面白いと思ったもの、手元におきたいと思ったもの。また、信頼する作家様の新作たちです。
素敵な作品たちから力をもらってようやく、開催する力をいただいていると感じます。
イベントのお知らせなどをしている配信(利尻 紙◇本ラジオ)を始め、もう少しうまく、できれば落ち着いて魅力を伝えられたらといつも思っています。
これは第一回に続き反省点ですね。

私自身、製作した紙もの雑貨や手製本を委託することはあまりありません。
それは作品を手に取っていただいたとき、少しでもよい状態でお届けしたいという思いが強いからです。
郵送をはじめ、作品の管理は難しいと考えています。
紙ものは湿気対策や折れ、皺などもつきやすい作品が多いです。本も、紙ものより頑丈なものが多いとはいえ、心配です。
ワツジンに作品を預けてくださる作家様も、心配な気持ちがあるのではないかと思っています。
だからこそ、丁寧にお預かりしたい。
現在の時刻は1時過ぎ。第二回の事後通販が開始したところです。
作家様に最後まで安心して作品をお預けいただけるよう努めていきたいと思います。


とある一日。

当日の様子、一部だけ書き残したいと思います。

夜、雷と大雨に眠れずにいました。
イベントを控えそわそわしながら毛布をかぶり、雷と雨粒の音で朝まで落ち着かないまま過ごしました。
この雨が続いたら、作品をどうやって搬入しようか――。そんなことばかりを考えていたら朝がきました。
「晴れてる……!」
きれきらした黄色の日差しが広がっていました。
嬉しい気持ちを抑えきれず玄関を出たら天気雨(笑)。
傘で包むようにして深夜まで準備した自分の作品を車に詰め込み出発。届いたばかりの新作のCDを再生し、利尻山を横目に会場へ。

流れてきた新曲の歌詞を聴いて、「ああ、私はイベントが開きたかったんだな」と気付きました。
以前からイベントを開催したいと計画を立てたりしていたことはありましたが、自分が思っていた以上に、「ちいさな夢」といってよいくらいに気持ちが膨らんでいたことに気付きました。
第一回目のレポートやペーパーで書いたかと思いますが、自身がイベントに参加してきて、作家様も来場者も楽しめるこんなイベントをつくりたいというあれこれが私にはたくさんありました。
濱田さんの協力があり、そのあれこれをほとんど詰め込むに至った第一回。
無事閉幕し、第二回が始まってやっと、実感が湧いたのかもしれません。

目元が熱くなるのを感じながら移り変わる景色。少しずつ晴れていく雲。
会場が見えてくると、ツギノバの上空だけきれいに雲が晴れています。
このまま雲が流れてくれたら……。車を止めた瞬間。傘は必要なくなっていました。
見上げる空は、ぽっかりと鮮やかな水色をみせて、旧学校であるツギノバの高い屋根からはぽたぽたと水滴が落ちる音色が鳴っています。

荷物を抱え会場に入るとすでに濱田さんが準備を進めていました。
「虹が出てますよ」
そう教えていただき窓の外をみると海の方角に綺麗に虹がかかっています。


胸がいっぱいになりました。
私はあまり虹を見たことがありません。でも別に虹が特別きれいだと思ったこともありませんでした。
それでも、その空は本当にきれいだった。
利尻のお天気とお天気がもたらす光景は本当に美しくて好きです。

じつはワツジン。こういったタイミングのよさみたいなものに救われることが多いです。
第一回は雨の日もはさみましたが、大切な作品を搬出するような肝心な瞬間には雨が一時やんだり、開催時刻になったら風がやんだり。
利尻の天気は変わりやすく、すっかり天気予報をみなくなってしまったのですが、今回もうまく天気予報がずれてくれてお天気には比較的恵まれていました。
オフラインのイベントの開催は天候も大事です。風が強いとそもそもお出掛けする人(通り過ぎる人)も見掛けなくなってしまいます。
慣れないイベントにお天気が力を貸してくれたかもしれない。そう思っています。



第二回を終えて

この記録。じつはイベント後すぐに執筆を終えていました。
ただ最後。どうまとめてよいものか悩んで一カ月以上が経ちます。
次回が決まっていた第一回とは異なり、現在ワツジンは今後の予定が立っていません。

ワツジンを通して、あらためてZINE・作品をつくる作家様の御心に触れた気がいたします。
そしていち作家として、主催者としてこういうイベントがあるというのは大切なことだなと思いました。たくさん学ばせていただき、たくさんの嬉しいをいただきました。
イベントを開催してよかった、参加していただけてよかった。いまはその思いだけです。

今後も紙雑貨作家として、本をつくる者として書き手も読み手も楽しめるような企画やイベントに携わっていきたいとそう思っています。
あなたとどこかで――それが北の大地のどこかなのか、インターネットやお手紙を通してなのかはわかりませんが――作品やイベントを通して出会うことができたら嬉しいです。
ワツジンに関わってくださった方々にあらためて感謝を申し上げます。

今年もあと僅かとなりましたが、今年も、来年も。紙や本、そして利尻が好きな方々の日々が素敵なものになることを祈っております。

2022/11/30 紙雑貨作家 魔術書工房 永都りす